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アイツと、読書と、音楽と

岡村ちゃんに長患い

「サブカルのすすめ」さん企画!岡村ちゃんと妄想peach Xmas

岡村ちゃんブログと言えばこの方、私もリンクを貼らせていただいております「サブカルのすすめ」のyujiさん企画、岡村ちゃんとXmasにDATEするならこんな感じ♡という、妄想炸裂企画、私の大好物分野でございます。

 
この際だから、岡村ポイントを山ほど盛り、ベイベにしかわからないネタもふんだんに入れつつ、楽しんで書かせていただきました。
以下、投稿した、私のpeach Xmasです!
ごゆるりとお読み下さい。
 
 
彼とつき合い始めてから3度目のクリスマスがくる。
もちろん、妻帯者の彼と一緒にクリスマスを過ごしたことは、まだない。そして今年も、ない、だろう。
彼と知り合ったのは、私がこの会社に派遣されてからすぐ。隣の部署だった彼に、必要以上に仕事を頼まれるようになってから、深い関係になるまではさほど時間はかからなかった。いつものことだ。私が働く上でいつも心がけたことはただ一つ。会社も男も後腐れのないように別れること。
 
退屈な事務処理を適当に済ませ、これほど大きな会社なのに、電話ボックスほどのスペースしかない喫煙室で私はいつものように休憩をとる。煙草が好きなわけではない。狭い空間に身をおきたいだけ。
それと、この場所からは、あそこが良く見える。
 
もう何度かよっただろう、向かいの和菓子屋さん。部長が甘いものに目がないから、三時のおやつにはよくあそこに和菓子を買いに行かされた。そのおつかいも、もうすぐ終わりだ。
そんなことを思っていると、またいつものようにアイツがお店のおやじさんに怒鳴られる声が聞こえる。
「ヤス、何度言ったらわかるんだ。試食に丸々ひとつ売り物の大福をくれてやるやつがあるか!ちゃんと試食用の形の崩れた菓子があるだろうが!今の大福代も、おまえの給料から引くからな!」
「はい。わかりました」
何回同じことで叱られるんだろう、大きな身体を小さくして謝る姿がかわいらしくて、つい笑ってしまう。
 
あの日もそうだった。社内で彼の奥さんから電話がかかってきたとき、奥さんのご機嫌をとっている彼の姿を見ていたらなんだか何もかもどうでもいいような気がしてきて、和菓子を買いにいくふりをして、お店の横の路地で私はこっそり泣いていた。
「お母さん、いやだよ僕、あんこ嫌いだよー」
「ひろし、そんなこと言ってお母さんを困らせないで。お婆ちゃんはここの大福が大好きなんだから」
「僕はケーキが食べたいの。いちごがのったケーキ!」
そんな親子の会話が聞こえてきた。店の中をこっそりのぞいてみると、アイツがにこにこしながら男の子の頭を撫でている。
「ひろしくん、あんこが嫌いってほんとにぃ~?」
「大嫌いだよ!」
「そっか。このお餅の中には、ケーキが入っているのになー」
「えー、嘘だよ!そんなの見たことないもん」
「じゃあ、目をつぶって、大きな口あけて食べてごらん」
しぶしぶ大福を口に含んだ男の子は驚きの声をあげた。
「わー、ケーキの味がする!」
アイツが男の子に食べさせたのは、生クリームがたっぷり入った、この店自慢のいちご大福だった。
「だろー!お兄さんはね、あまーいチョコよりも、こっちが好きなんだ」
「僕もこれなら食べられる!」
そう言って、たくさんお土産にいちご大福を買っていったんだっけ、あの親子。
そして、隠れて見ていたつもりの、まだ涙の跡が乾かない私にも、そっと一ついちご大福をくれた。
「だいじょうぶ?」
と一言だけ声をかけて。
 
たまには自分のためにお菓子を買っていこうか、ここにもあとそんなに長くいれそうもないし、そう思いついて会社帰りに和菓子屋によると、そこには小指をたてながら、勢いよくティーカップの紅茶を飲むアイツがいた。
「あ、休憩中ですか?」そういうつもりが「なんですか?その紅茶の飲み方は?」ついつい聞いてしまった。
「え?僕の紅茶の飲み方、変わってますか?僕なんかいつもこんな感じですよ」
おかしい人。もう、ほんとおかしい人。
そう思っていたら、気が緩んできて、あっという間に私はお店の中で泣き始めていた。しかも号泣だ。
アイツは何も言わなかった。私が落ち着くまで店の隅っこにある可愛らしい座布団に座らせておいてくれた。
「つらいですか?」
そう声をかけられたのは、お店が閉店して、シャッターを閉めた瞬間だった。聞き違いかと思った。
「つらいですか?」
「つらいです」
「やっぱりつらいんですか。」
「はい。つらいんです。このお店に寄れるのも、あと少しだと思います」
なんで正直に答えちゃってるんだろう私。恥ずかしくなって、この間の大福のお礼すら言えず、お店を飛び出した。
それからしばらくは、向かいの和菓子屋には行かなかった。おつかいを頼まれても、お菓子は少し遠いお店に行って買うようにした。たまにはバターの効いた洋菓子もいいですよ、おいしいお店みつけたんです、とかなんとか理由をつけて。
そして私は年内中に退職することを彼に告げた。彼のほっとした顔を私は見逃さなかった。
 
会社を辞める前に、アイツの顔がみたい、そう思い、退職直前に勇気をふりしぼり和菓子屋に行った。
そこにアイツの姿はなく、口うるさいお店のおやじさんだけがぽつんと座っていた。
「今日は部長さんに何をたのまれたんだい?」
「ごめんなさい。今日はあのバイトの人に会いにきたの。ほらおじさんがヤスって呼んでいた」
「あー、あいつなら辞めたよ。もう半月になるかな。なんだか音楽活動に専念するとかって、かっこつけたこと言いやがってさ」
「え?あの人、ミュージシャンなの?」
そういえば、ギターケースを抱え、大きなリュックサックを背負ったアイツによくにた男性を、夜遅くに近所で見たことがあった。あれはやっぱりアイツだったんだ。
私がぼーっとしていると、おやじさんが折り皺のたくさんついたチラシを見せてくれた。
「あいつさ、宣伝するなら、もっときれいな紙でよこせっていうんだよね。店の隅っこにでも貼ってやるっていうの」
そこには、ライブのお知らせが書かれていた。
日付は今日。12月23日。
「おじさん、この紙もらうね!」
返事も聞かずに私は走った。走って走って、心臓が口から飛び出そうなくらい走って、ライブハウスの中まで駆けていった。受付でお金を払うのももどかしく、いざ会場の入り口に立った時、私、何やってんだろう、と一気に顔が赤くなった。もう帰ろう、そう思った瞬間、受付の人が会場の扉を開けた。突然開け放たれたドアに、お客の何人かが文句を言ったが、そんなことに構っていられなかった。私はステージ中央に立つアイツの姿に目をうばわれた。
 
アイツはスーツを着ていた。いつもは変な子供の絵本からとってきたような柄のTシャツばかり着ているのに、そこにいたアイツは、黒のスーツを着こなした、メガネの似合う私の知らないアイツだった。
私、来るんじゃなかった、そう思った瞬間、アイツと目が合った。
そして彼は言った。
「新曲やります」
その一言で、観客は大騒ぎになった。
岡村ちゃんが喋った!」
「新曲なんて、6年ぶりだぜ!」
「今日来て、ほんとラッキーだね」
曲が始まると同時にライブハウスそのモノが突然生命を吹き込まれたように、うねり始めた。その力に私は圧倒された。私は、自分でも理由のみつからない涙を流し始めた。
その時、彼が私の目の前に歩み寄ってきた。周囲がざわつく。そして彼は歌った
「ビバナミダ こぼれおちてゆけばいいじゃん 無駄じゃない とまらない今の君が好き ナミダナミダ」
アイツは私の涙を手でぬぐいながら、こう歌った。
「その涙、僕に委ねてくれないか。七転び八起き。ともに行く また最高ってきかせて。ナミダナミダ。サイチェン」
サイチェンって聞こえたけど、それって中国語の再見?そして七転び八起きって、いったい?
 
そこから先の記憶が私にはほとんどない。気絶して、係の人に楽屋に運ばれて、気づいた時にはいつもの姿のアイツがいた。
「あなた、スーパースターだったのね」
私がそう言うと、アイツはフフッと笑い
「全然そんなことないですよ」
と謙遜してみせた。
「ううん。少なくても私には、今日のあなたはスーパースターだった」
ひとつぶだけこぼれ落ちた涙を、彼はくしゃくしゃのハンカチを大きなリュックから出してふいてくれた。
「その涙 僕に委ねてくれないか?」
そう歌う彼に、私はちょっと恥ずかしくなり
「七転び八起き、ね」
恥ずかしさをごまかすため笑った私に、彼はまじめな顔で
「あの、よかったら、24日僕と‥」
そう小さな声で呟いた。
時計を見ると、日付はもう24日に変わっていた。私の中の時計も大きく時間が動いたみたいだ。
「ひとつだけお願いしてもいいですか?」
「ん?なに?」
「あのライブの時のスーツを着てデートしてもらいたいの」
彼はまたフフっと笑って
「いいですよ。場所は合羽橋とか浅草でもいいですか?」
クリスマスイブに合羽橋かー。それもいいかも。とってもいいかも!
「それとあとひとつ。あなたの名前、まだ聞いていないんですけど」
「シンガーソングライターアンドダンサーの岡村靖幸です」
 
 
いかがでしたでしょうか。
少しは萌えていただきましたか?
実は、私の他にも6名の投稿があったそうです。詳細はコチラ!
 
人の企画にのっかるの楽しー!
yujiさん、ありがとうございました!